吉田博(1876‐1950)は、黒田清輝らが結成した白馬会と明治の西洋画壇を二分した太平洋画会の中心人物として活躍した画家です。 40歳を過ぎて木版画を始め、西洋の写実的な表現と日本の伝統的な木版画技法を統合した新しい木版画の創造をめざしました。
博は、こよなく自然を愛し、自然の中にこそ美があるとし、自然とそれを直接見ることのできない人との間にたって、その美を表わすことを画家の使命としました。 博の作品のほとんどは風景画で占められており、その取材範囲は、日本はもとより世界各国に及んでいます。なかでも、山岳は好んだ題材の一つで、若い頃から国内外の諸山に登り、清新な山気溢れる作品を多く描いています。
本展では、山を描いた代表作「日本アルプス十二題」や「冨士拾景」、刻一刻と変化する海の表情を題した「瀬戸内海集」など約90点を展観します。人間と自然との共生が求められる今、自然の中に身を置き、その美を描ききろうとした博の情緒溢れる作品をご鑑賞ください。