ジョアン・ミロ(1893-1983)はスペイン東北部カタルーニャ地方の主要都市バルセロナに生まれた、ピカソやダリと並ぶ20世紀スペインを代表する芸術家の一人です。26歳でパリに出てキュビスム、フォービスムなど新しい芸術の影響を受け、やがてミロの芸術観に最も衝撃を与えたシュルレアリスムの画家や詩人たちと活動を共にし中心的作家となります。ミロはその並はずれた想像力がうみだす自由でユニークなフォルムを嬉々とした黒い輪郭線で描き、赤・青・黄などの眼に鮮やかな色彩によるリズミカルな表現によって、独特の詩的世界を確立しました。主なモチーフは太陽・月・星・夜・鳥など大自然の要素が多く、故郷カタルーニャ地方の力強い風景に深く根ざしています。また、ミロの創作活動は油絵以外に版画、壁画、彫刻、陶器、舞台美術と多岐にわたり、様々な素材と技法を用いてその創造力を膨らませました。本展覧会では、ミロが生涯に2500点を超える膨大な作品を残すほど熱中した版画作品の中から、第一作目『一羽の小さなカササギがいた』をはじめ、最晩年の『ワールドカップ'82 スペイン』ポスターまでを網羅した選りすぐりの作品をご紹介いたします。版画芸術を通してミロ芸術の源泉を探り、造形詩人といわれるジョアン・ミロの世界をご堪能ください。