日本の女性陶芸家の草分けとして活躍し、卒寿を迎えてなお旺盛に作品を作り続ける辻輝子の回顧展を開催します。
辻輝子は大正9年(1920)東京生まれ。日本画を学ぶとともに陶芸家を志し、昭和13年(1938)、日展作家の大森光彦に弟子入りし、厳しい修行のうえ陶芸の基礎を身に付けました。
その才能が開花したのは昭和14年(1939)ニューヨーク万国博覧会に《飾壺 山いちご》が入選、また16年(1941)には、東京府現代工芸美術展出品の《飾筥》が特賞を受賞したことに始まります。辻輝子の造形は、小手先の技や解釈を一切加えず、ひたすら自然の美しさに敬服して創作することで成り立っています。伊豆川奈の大自然の中に窯を築き、開窯の日に孔雀が飛来したことから「孔雀窯」と名付けて40余年。毎日のスケッチを欠かさず、身の回りの美を焼き物に作りたいとの一心で創作を続けています。
また辻輝子は、富本憲吉、北大路魯山人、岡本太郎、棟方志功、土門拳、川端康成といった、一流の芸術家、文化人たちと親交を結び、その創作の糧としました。本展では、これらの人々との交流も紹介します。
「完璧な自然の美を少しでも写しとりたい」――辻輝子の70年におよぶ作陶人生を貫くこの思いが、会場にあふれることでしょう。