フランス人画家で漫画家でもあるA・ロビダ(1848-1926)は未来の預言者としてよく知られています。彼はSF(サイエンス・フィクション)という言葉が使われる前からSFイラストを多数手がけ、“イラストのジュール・ベルヌ”といわれています。
ロビダの描いたイラストは主著『20世紀(Le vingtieme siecle)』(1882年刊)、『20世紀―電化生活(Le vingtieme siecle,la vie electrique)』(1890年刊)、『20世紀の戦争(Laguerre au vingtieme siecle)』(1887年刊)などで見ることができます。このうち、『20世紀』と『20世紀―電化生活』では社会の発達や発明によって変化がもたらされ、女性が法律家、政治家、医者などとして活躍し、街頭でテレビ電話を使ったり、壁サイズの大型スクリーンテレビが家庭にあったり、長距離の空の旅や海外旅行が可能となったり、さらにはミニスカートの登場さえも予言していますが、これらのイラストはいずれもセンスとユーモアが溢れています。
また、ロビダは工業の発達によって、私たちが今日において直面している深刻な環境破壊や公害問題などがもたらされていることも見通していました。さらには、『20世紀の戦争』『ラ・カリカチュール(La Caricature)』『地獄のような戦争(La guerre inferale)』などに戦争による悲惨な未来も描いています。ロビダは空中戦闘、戦車、潜水艦、そして化学兵器戦争までも予測しましたが、その内容は第一次世界大戦中の1916年に『予言漫画家(Un caricaturiste prophete)』というタイトルで刊行されました。しかし、そのときにはすでにロビダの予言の多くが現実のものとなっていました。
ロビダの才能はSFの世界にとどまらず、クラシックなイラストも描きました。それらはラブレーの仕事やスイフトの『ガリバー旅行記』のように活力的で刺激的なすばらしい作品でした。そして、過ぎ去りしフランスを描いたロビダの絵は高い評価を得て1900年のパリ万博における“古きパリ”のデザインを委託されたほどです。
1880年代を通してロビダはファッション、流行、さらにはフランス社会のあらゆる事象を漫画にしていきました。彼は漫画雑誌『ラ・カ・・・