官展へ出品された鏑木清方の作品は、高い評価を受け、しばしば押絵師によって意匠化されて羽子板になりました。今回出品の押絵羽子板《ためさるゝ日》は、大正七年第十二回文展に出品された作品を参考にしています。長崎の遊女の踏絵に取材したものです。
また、《春の夜のうらみ》は、大正十一年第四回帝展へ出品された作品をもとにしています。京鹿子娘道成寺の一場面で、恨みの鐘を見つめる娘の姿です。
本展覧会では、押絵羽子板を中心に、正月を迎えた人々の暮らしを描いた口絵などを展示いたします。清方の情趣に満ちた新春の風情をお楽しみください。