この展覧会は当館の豊富なコレクションから、こどもを描き出した作品の数々を「こどもの情景 原風景を求めて」というテーマで紹介します。展示は、こどもが登場する写真、こどもの世界を反映した写真がもつ共通性や関連性に着目し、たくさんの「情景」に分類する構成になっています。
写真家たちは、こどもの集まる場所に引き寄せられ、こどもとの出会いをとらえ、走り回り、遊びに夢中になるこどもの姿、純粋な表情や瞳の輝きに魅了されます。被写体としてのこどもは、生命のエネルギーを感じさせ、写真家の撮影意欲や想像力を触発するものです。時代も撮影場所も様々な「こどもの情景」は、いくつもの共通する感覚や感情でつながっています。
写真を見る私たちにとって、見知らぬこどもの姿、知らないはずの光景に懐かしさを覚えるのはなぜでしょうか。私たちはそこに自分自身のこどもの頃の記憶やこどもと過ごした思い出を重ねて見ているのではないでしょうか。だれもがむかしはこどもだった。私たちは、その当たり前のことを忘れてしまいがちです。たくさんの情景のなかを旅するように会場をまわってみてください。そこでは、あなた自身の分身と出会い、忘れてしまった風景をみつけることができるかもしれません。こどもをめぐる写真表現をたどることは、心の原風景をさがすことでもあるのです。