世田谷美術館が、アフリカの現代作家の作品をコレクションしていることをご存知でしょうか?
「インサイド・ストーリー 同時代のアフリカ美術」展(1995-96)開催以来、本館ではたびたびアフリカ美術の紹介を行ってきました。本展では、世田谷美術館が2011年7月1日より翌年3月末日まで改修工事により休館になるのを機に、宮本三郎記念美術館で初めて、同時代のアフリカ美術をご紹介します。
たとえば、アナパ(1962-)の《ルバ・フィーリング》。「盛り場のごろつき」を意味する仏語「ルバール」の現地なまりである「ルバ」。荒々しいタッチが特徴的なその絵画には、立ち並ぶ高層ビルを背景に、腕を組み立ち尽くす一人の男が描かれています。地方から職を求め都会にやってきたものの、なかなか職にありつけない若者の姿がそこにはあります。
画家、彫刻家、演劇人、評論家などでいくつもの顔をもつイッサ・サンブ(1945-)は、木の枝やロープ、フライパンなどアフリカであればどこでも手に入る素材を使って人間を表現しています。《彼らは立っている》は、人間だけではなく、アフリカの歴史にも言い及んでいるように思われます。廃材を利用しているのはサンブだけではありません。ムスタファ・ディメ(1952-1998)には、海岸に流れ着く流木や廃船を解体して得た木を使った作品があります。
本展ではそういったアフリカの現代作家による絵画や彫刻を中心にしつつ、現地で手に入れたマネキンや床屋の看板、玩具などもあわせて展示します。それぞれにアフリカを伝える美術作品や資料などから、アフリカという広大な土地から立ちあがる、さまざまな「貌」(かお)をご覧いただければ幸いです。