「創作版画」は、明治末期に洋画家山本鼎が版画の美術的な評価を高めるために提唱した自画・自刻・自刷による版画のことです。江戸時代の浮世絵は版元が主となった絵師、彫師、刷師による分業制でしたが、創作版画は作家本人が全工程を手がけるため、作者には個性が反映されます。
川上澄生が木版画の制作を始めた1920年代の初めは、版画技法書や版画誌の普及により創作版画が全国に拡大した時期です。澄生は豊かな表現力で詩情あふれる作品を発表し、版画誌にも多くの作品を寄せて、独自の創作活動を展開していきました。
本展は、川上澄生の作品を通して、大正末期から昭和初期にかけて制作された創作版画の魅力を紹介するものです。