博物学の時代―ひとは世界をどのように見、記述して来たか
18世紀以降ヨーロッパを中心として、それまでの美術史の文脈には収まりきれない膨大な図像が制作されるようになります。それらは当時新しく登場した博物学を中心とした動・植物図譜、航海記、地図、民俗学的図譜、解剖図譜などであり、多色銅版やリトグラフなど当時の最先端の印刷技術を駆使した書物として出版されました。武蔵野美術大学美術館・図書館では旧蔵の貴重書に荒俣宏氏旧蔵コレクションを加えることで、今日的な視点から18世紀以降の博物図譜を軸とする視覚資料を概観することが可能となりました。今回は2010年6月、8月に続いて2011年4月に第3弾として研究の成果を公開します。2008年より美術館・図書館と造形研究センター近代デザイン研究プロジェクトが共同で博物図譜の図版とテキスト全ページの高解像度スキャニングしデジタルアーカイブ化を進めてきた結果、すべての資料を概観することが実現しました。さらに2010年には本展のために、当館で独自開発したタッチパネル式高解像度閲覧システムによって、普段直接触れることの出来ない貴重書を全ページ細部にわたり閲覧することが可能となりました。近代デザインプロジェクトのこうした取り組みは、本学の研究基盤を成す図像学の観点から美術系・デザイン系の領域を超えた全学生にとって芸術的な視野を広げるだけでなく、新たな創作意欲や研究心の向上に資することに寄与しています。また、これまで2回の展示公開を通して内外の研究者へのさらなる研究発展にも貢献しています。本展では実物の博物図譜とデジタルアーカイブから芸術と科学の時代の宇宙観、世界観、価値観に対する当時の人々の創造性と探究心を読み解き、さらに今日的な「視覚の記述」の観点から博物図譜の歴史的な意味を再検証します。
また、2011年10月には「博物図譜とデジタルアーカイブⅣ」を開催します。2012年度には「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」採択における近代デザイン研究プロジェクトのまとめとして、「博物図譜とデジタルアーカイブ」総集編の展覧会を計画しています。