肥前地方で江戸時代に作られた陶磁器は、唐津焼、古武雄焼というれる陶器と、新しい技術で作られた磁器があります。この肥前磁器のなかで17世紀初め、朝鮮半島から伝わったのが伊万里焼といわれる染付磁器で、やがて伊万里焼から柿右衛門といわれる華やかな色絵磁器が完成し、藩窯として鍋島焼が始まります。
肥前磁器の楽しさは、中国の古染付や呉州染付、祥瑞などを手本にした初期伊万里染付から、空間を生かした文様意匠の作品が生まれ、やがて赤、緑、黄、紫などの色彩で文様を描く和様の色絵磁器へと展開するところにあります。初めは灰白色であった白磁も、純白の白磁へと完成度を高め、柿右衛門といわれる華やかな色絵磁器が完成します。17世紀中頃から肥前磁器は東南アジアから中近東諸国、そしてヨーロッパへと輸出され、海外市場の需要に応じた器形や文様の磁器が大量に作られました。同時に、国内市場でも高級品が作られるようになり、元禄頃(1688-1704)には京都でも質の高い製品として知られました。染錦手の皿や鉢はそれを代表するものです。藩窯としての鍋島焼は、藩の献上品として、独特の意匠と企画による器形で、優雅な色鍋島や染付、青磁釉などの鍋島磁器を作り出しました。
本展では、平成10年に山本正之氏から寄贈を受けた肥前磁器を中心に、磁器の始まり、またその展開の様相を100点余りの作品で通覧します。