雅宴から動乱へ――画家ゴヤが見つめた、人間の光と影。
スペイン美術の巨匠フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)の作品は、西欧社会の一大変革期の証言であるとともに、時代を超えて私たちの心に響く今日性を備えています。彼は成功への野心に駆られて国王カルロス4世の主席宮廷画家に上りつめ、王侯貴族や廷臣たちの優雅な肖像画によって名声を得ました。しかしナポレオンの侵略により戦争と混乱に見舞われたスペイン社会の悲惨な現実や、心の奥にひそむ不条理な幻想世界への関心は、彼の後半生の芸術に大きな展開をもたらします。社会と人間の諸相を光と影の交錯のもとに捉えるゴヤの創造力は、82年の生涯の最後まで衰えることを知りませんでした。この展覧会は、ヨーロッパ絵画の宝庫として名高いプラド美術館のコレクションから選ばれた油彩画、素描など72点を中心に、国立西洋美術館などが所蔵する反が約50点を加え、ゴヤ芸術のさまざまな側面を紹介します。