山村流は江戸時代に創始され、上方舞四流のひとつに数えられる大阪の舞踊の流派で、現在も芸能界や花柳界、一般家庭に門下を育成しています。流祖・初代山村友五郎(1781~1844)は役者出身で、大坂の歌舞伎で絶大な人気を誇った三代目中村歌右衛門(1778~1838)と親交があり、歌舞伎舞踊の振付をおこないました。そのため、山村流は座敷舞(地唄舞)で知られた流儀ですが、初代友五郎からの歌舞伎舞踊も残っているのが特徴となっています。
友五郎の養子・養女は、それぞれ居住する地名にちなみ新町家・九郎右衛門家・島之内家として山村の舞を伝え、その門弟の中には富田屋八千代(1887~1924)や武原はん(1903 ~1998)等、数々の名手を輩出しました。戦時下の昭和17年(1942)、大阪の伝統芸能である山村舞の消逸を危惧した多くの大阪の知識人による尽力のもと、島之内家の末裔である若子(1869~1942)が三世宗家を襲名し、現在の六世宗家へと続いています。
本展では、山村流の歴史、歌舞伎をはじめ他の芸能との関係などを、山村流宗家所蔵の資料を中心に紹介します。今回の展示が、粋な大阪文化の一端にふれていただく機会となれば幸いです。