日系三世としてブラジルに生まれた上西は、自らのルーツであり空想の対象であった日本、生まれ育ったブラジル、そして現在居住する現実の日本という複数のバックグラウンドの関係を考察し、その作品は想像と現実、過去と現在を交差させる試みである。江戸時代の地図の切り抜きを、ポルトガル語圏の偉大な詩人であるフェルナンド・ペソアの詩がびっしりと囲んだ作品では、「あらゆる道があらゆる場所へと通じる」というその詩のあらわすとおりに、領域を超えて時間的・空間的広がりを見せる。言語と造形芸術を融合させた上西の試みは、極めて個人的なテーマを扱いながらも観る者を壮大な旅へといざなう。