伝統的な友禅染の技法を用いて、日常生活の用に供される工芸を視覚芸術へと転換する石井亨。ヒップホップカルチャーの一要素であるグラフィティの影響を強く受けていた初期作品を経て、イギリス留学を転機に、自らのバックグラウンドとしての日本文化や伝統芸術に立脚した制作をスタートさせる。2007年以降、現代日本社会を象徴するサラリーマンがモティーフとなり、主題は「都市」へと発展した。日本の伝統芸術の文脈から抽出した要素を画面に織り込む独創的な手法によって、石井は伝統を継承しつつ、その先にある普遍的価値をもった「新たな伝統」の創造を目指す。