ヴァンジ彫刻庭園美術館では、所蔵作品による「わたしと仕事」展を開催いたします。デッサン、テラコッタ習作、石膏像、石彫小品、そしてヴァンジの制作にまつわる言葉を展示し、石彫の制作過程をたどります。
ヴァンジは、幾多のデッサンを描きながら構想を練り上げ、またテラコッタによる習作、実物大の粘土模型を扱いながら、素材を決めています。イタリア屈指の大理石産地であるピエトラサンタに点在する石彫工芸に足を運び、自らの目と手で仕上げに携わります。このような伝統的、制度的ともいえるプロセスにおいて、ヴァンジはひとつひとつの過程に意味を見出し、表現と結び付けてきました。素材の持つ物理的な性質と向き合い、やりとりを通じて、イメージや様式の拘束から彫刻を自立させます。
ヴァンジは作品について語るとき、「仕事」という言葉をよく用います。彼にとって仕事とは、彫刻そのもの、彫刻にうちこんだ人生そのもの、といえるかもしれません。働くことの意義が見出しにくくなっている今日、それは、単なる技法論をこえて、ものをつくることへの情熱や、社会のなかで仕事をする普遍を、伝えてくれることでしょう。