本年は当館が開館して30周年にあたります。これを記念して、渋谷区ともゆかりのある、20世紀の日本洋画壇を代表する画家牛島憲之の回顧展を開催いたします。
牛島憲之(1900-1997)は、熊本県に生まれ、少年時代より画家を志し、19歳にして上京、青年時代の一時期を今の渋谷区千駄ヶ谷で過ごしました。東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業した1927年の帝展に初入選、以後、帝展、槐樹社展、東光会展、創元会展などで作品を発表。戦後の第2回日展で《炎昼》により特選を受賞しました。1949年に須田寿などとともに自由な創作の場として立軌会を結成、以後、同会を中心に、日本国際美術展・国際形象展などで作品を発表、また、1954年からは東京藝術大学で後進の指導にもあたりました。1981年には芸術院会員となり、1983年には文化勲章を受章しています。その作品は、初期の芝居小屋などの群衆の熱気を題材とした作品から、水辺の風景や陽だまりといった自然を追っての作品に、さらに、水門やタンク・煙突などの人工的な構築物を描きこむようになり、牛島の画風が確立されていきます。大胆な構図、茫洋とした色彩、豊かな詩情がその特色といえるでしょう。
本展では、学生時代の《風景》から絶筆となった《道一筋》までの66点の作品により、牛島の画業を回顧いたします。97年間の画家としての一生の中で、モティーフも技巧も変化しますが、牛島が追求し続けたのは日本の風土ととけあった油絵であり、日本の美でした。気品のある、静謐感と詩情豊かな牛島憲之の絵画世界に浸っていただきたいと思います。