女性をテーマに作品を発表し続けているベッティナ ランスが、2005年に撮影した23枚のポートレイト写真をご紹介いたします。「Héroïnes」と名づけられたこのシリーズでは、“写真と彫刻の融合”というベッティナのかねてからの強い願いを実現。その被写体となった女性たちは、世界的な美女としてカメラの前に立つモデルたちです。リメイクされたオートクチュールのヴィンテージドレスを身にまとった彼女たちが、ベッティナによって写し出されたその姿は、ファッション雑誌や広告の世界とは全く別のものでした。単調と言ってもいいほどのグレーのモノトーンを背景に、石の台座だけを小道具に使った撮影でベッティナがモデルに行った依頼は、石を使って何かを想像すること。そこで明らかにされたのは、内面から生まれる美、カリスマ性から湧き出て石の上に放置されることで浮かびあがる美でした。長年仕事をしてきたファッション写真の世界を分析的に見つめ、ベッティナがたどりついたのは、ファッションこそがパーソナリティーを明らかにし、ファッションを「超えた」ところにある何かに導く、ということ。その何かとは?ベッティナ ランスが手がけた極めて複雑な仕事である「Héroïnes」には、さまざまに交差する写真家の眼差しで、オフビートな美が表現されています。