川端実は、1911年東京に生まれました。祖父は日本画家川端玉章、父も日本画家川端茂章という芸術一家に育ちました。 1936年の文展鑑査展では《海辺》が入選して選奨となり、1939年には光風会会員に挙げられ、早くから頭角を現わします。
しかし、本格的にその画業を展開したのは、戦後だといってよいでしょう。意欲的に次々と作品を発表し、1950年代にはフォーヴィックな作風から、画面を構成する強い意識をもちつつキュビスム的な作品を描くようになります。その活躍は日本だけにとどまらず、1958年以降はベティ・パーソン画廊と契約し、第2回グッゲンハイム国際展において《リズム 茶》により個人表彰名誉賞を受け、翌年には第5回サンパウロ・ビエンナーレ展で賞金を受けるなど、国際的な作家としての地位を確かなものにしました。以後も、主にニューヨークを舞台に活動し、鋭い感覚が捉えた画面構成と、優れた色彩感覚を生かし、独自の抽象画を制作し続けました。
そこで本展では、確固たる仕事を残してきた川端実の生誕100年を記念し、その足跡を改めて検証いたします。戦後の代表作を中心に、力強くそして鋭く緊張をはらんだ作品の変遷を、油彩約45点、デッサン類10点でご紹介いたします。また本展は、川端実没後最初の展覧会であり、19年振りの本格的な個展となります。