ヴェネツィアはその誕生から1000 年間で、建国・絶頂・衰退までの歴史を辿った数奇な運命の都市といえるでしょう。
697 年に共和国総督が初選出されて以来、「自由と独立」を貫き、強大な海軍力と交易による富を背景に「アドリア海の女王」として君臨し、13 世紀には黄金時代を迎えました。そして16 世紀ルネサンス期には、今までの富の蓄積の上に文化が爛熟期を迎え、ヨーロッパの芸術家のみならず、富裕階級が訪れる観光と歓楽の街と化しましたが、1797 年にナポレオンの侵略により消滅に至ります。
現在でも、かつての栄光の軌跡はサン・マルコ広場やドゥカーレ宮殿など街の至る所に受け継がれています。当時の街並みがこれだけ残っているのは奇跡と言っても過言ではないでしょう。 1987 年には世界文化遺産に登録されたヴェネツィアは、ますます世界中の人々を魅了し続け、年間2000 万人もの観光客が訪れるといいます。本展は、約140 点に及ぶルネサンス期の華やかな作品を通して、ヴェネツィアという都市とその芸術をあわせて紹介し、この街がいかに文化的な成熟度が高く、栄耀栄華を誇っていたのかを検証いたします。