ルネッサンス期のヴェネチアは地中海貿易を独占し、栄華を誇ったことからアドリア海の女王とも呼ばれました。そのヴェネチア・ムラーノ島で16世紀から20世紀にかけて作られた伝統のガラス工芸品ヴェネチアン・グラスとヴェネチアン・ビーズは当時の地位や冨の象徴であったと同時に信仰の対象ともなりました。特に今回特別出品されるビーズは、秘法中の秘法である伝統的なレース・グラスやミルフィオリ・グラスを封じ込めた繊細優美な作品やヴェネチアン・グラスの3万色ともいわれる豊かな色彩を自在に操ったビーズまで、その輝きは金や宝石にも勝る美しさを誇っています。この高い技術と芸術性はアクセサリー、ロザリオ、バッグ、コスチュームの飾りへと姿を変えてさらに世界中の人々を魅了しました。このように変化をとげたビーズからはヨーロッパ文化や芸術潮流の変化が読み取れてきます。本展では、「文化」「技術」「歴史」などのテーマに区切り、ヴェネチアン・グラスやビーズなど日本初公開の品々を含むヴェネチアの美術館や個人秘蔵の作品に、衣裳や写真などを交え、時を越えて世界の多くの人々を魅了し続けている“ビーズとヴェネチアン・グラス”の世界を100余点で展観します。