人生においてもっとも多感でナイーブな十代の最終章、二十歳という抽象的な時期は、多くの芸術家にとって表現の原点であり、出発点にも位置づけられます。この時期、未熟と成熟とが葛藤しつつ、世界との関係の中で客観的な自己の形を作り始めるのです。青木繁、村山槐多や関根正二、佐伯祐三、三岸好太郎、現代では難波田史男、石田徹也のような典型的な夭折の画家はもとより、長い活動に生きた芸術家たちもまた、この時期の作品に創作の書くとなる初々しくも痛切な感性のほとばしりを見ることができます。
本展覧会では油彩画(一部創作版画)に焦点をしぼり、明治、大正、昭和そして現代までの画家たちの二十歳前後の作品を集め、その創作の原点を探ります。そこにはそれぞれの時代における精神と自我の現れの違いがみられるでしょう。と同時に、時代を越え共通する感性の発露もみられるに違いありません。また、各時代の青春期の作品を一堂にならべることにより、別個に語られがちな近代と現代の美術を同一の地平で考える機会ともなるはずです。さらに、世代の異なる画家たちが青春期に描いた作品群は、その真摯でひたむきな態度によって、現代の若い世代への力強いメッセージとなるはずです。
是非この機会に各時代の画家たちが苦闘し悩みつつ世に残した、清冽な作品の数々をご覧ください。