パリで花開いた銅版画家・浜口陽三の展覧会です。
1953年に二度目の渡仏を果たした浜口陽三は、銅版画の技法を追求して数年の間に自分のスタイルを確立しました。身近な果物を柔らかな闇に包んだ、静かで芳醇な作品は、1957年には二つの国際コンクールでグランプリを受賞するという快挙を成し遂げ、名実共に世界を代表する版画家の一人となりました。
本展覧会のコーナー展示では、ジャーナリスト阿部徹雄氏の写真を通して、1958年春の浜口陽三の制作風景を紹介します。
阿部氏は新聞社の特派員として、ヨーロッパで活躍する作家たちのアトリエを訪ね歩き、写真集『現代の造形』を完成させしました。掲載写真のほか、未発表写真も含めて約20点を展示します。前途洋洋たる版画家のアトリエはこまごまとした道具類であふれ、張りつめた空気まで伝わってくるようです。銅版画60点と一緒にご鑑賞ください。