私たち人間とは異なる姿や生態、能力を持った動物は、西洋・東洋を問わず、古くから造形表現の重要なテーマのひとつです。日本では、大和絵の動物画や花鳥画などに表現され、また、西洋の芸術思想に大きな影響を受けた近代以降になると、次々と展開する新しい造形表現の追求なかで、動物たちの特徴や仕草から発想を得た多彩な作品が生み出されていきました。
美術の世界では、かわいいイヌやネコ、鳥や昆虫などのほか、空想上の生き物でさえも大きな存在感をもって登場します。こうした動物たちには、愛情や敬意といった作家のさまざまな感情や価値観が込められるとともに、動物の姿を借りて人間や社会に対するメッセージが託されていることがあります。
今回の常設展では、刈谷市美術館の収蔵作品のなかから、動物が表現された絵画と彫刻作品に加え、動物が登場する絵本の原画をあわせてご紹介します。それぞれの作家たちの多様なる動物表現をとおして、人間と動物、あるいは人間と社会などさまざまな関係に思いをめぐらせてご覧いただければと思います。