日本で育まれた着物文化の伝統と美意識は、19世紀以降ヨーロッパのアートやファッション界に大きな影響を与えてきました。まるでキャンバスに絵を描くように表現された着物の芸術性は、海外でも高く評価され時代や民族の枠を超えて人々の心をとらえています。着物は西洋の構築的な衣服とは異なり、身体を強く意識することなく、着物そのものの美と着装により服飾美を追求しているのです。江戸時代の着物には「斬新さ」、日本人ならではの「飾り」や「遊び」の精神、「粋」や「伊達」などの美意識が込められ、着装する人の内なるものが具現化されています。そして21世紀を迎えた今、着物はグローバルなKIMONOとして定着しています。
京都・大阪・東京・横浜の各都市を巡回する展覧会では、櫛かんざし美術館の装身具、髙島屋史料館の能装束とともに女子美染織コレクションの着物類を展示し、豪華絢爛な江戸時代の服飾文化を紹介します。展覧会は「江戸のアヴァンギャルド」「浮世のエレガンス」「装いのセレブレーション」「風姿のスペクタクル」の4つの章で構成されています。日本の着物文化が頂点を極めた江戸時代に、人々が自由奔放に自己表現を愉しんだバラエティ豊かな着物と、そのエスプリは世代を超えて継承され、今を生きる私たちの手で着実に進化しています。私たちに時代を超えて語りかけてくる日本の着物の世界を堪能していただきたいと思います。
尚、女子美アートミュージアムでは、女子美染織コレクションを中心に大学付属美術館としての教育的効果を視野にいれた内容を加えて再編成いたします。