1995年、豊田市美術館とともに開館した高橋節郎館は、漆工芸家・高橋節郎の代表作を常設展示するとともに、漆文化の普及を目的とした各種事業を開催し、多くの成果を上げてまいりました。このたび開館15周年と迎えるにあたり、より多くの人々に漆文化や工芸の素晴らしさを紹介していくために、新たな企画や事業を展開します。その第一弾として「柴田是真」展を企画しました。
柴田是真(1807-1891)は、幕末から明治の大変革期に漆工家・画家として偉大な足跡を残した職人であり、芸術家です。11歳で蒔絵の技術を、16歳で円山派の画を学んだ是真は、大胆かつ精緻な漆工芸や絵画、漆絵といった多くの作品を創り出しました。新旧の価値観が交錯する時代にあって、「職人技から芸術へ」、あるいは「江戸から近代へ」の橋渡しを体現した人物といえます。本展覧会は、是真の残した大きな3つの成果、①伝統を忠実に受け継ぎ次代につないだこと、②失われていた技術を復活させたこと、③多様な技法によって新しい世界を切り拓いたこと、に注目して構成します。是真の漆工や絵画、漆絵などの優品40有余点と、是真に大きな影響を与えた江戸時代の漆工家・絵師、小川破笠(1663-1747)の作品2点も併せて紹介し、漆の可能性に挑み続けてきた高橋節郎の記念館にふさわしい展覧会となることを目指した企画です。