歌川国芳(1797-1862)は、葛飾北斎、歌川広重らと同時代に活躍した、幕末の浮世絵師です。歌川豊国に入門し、30歳の時に手がけたジャンルは武者絵のほかに美人画、役者絵、風景画、滑稽な劇画など多岐にわたります。国芳は構図にもこだわり、三枚続きの画面に描いた鯉や骸骨のダイナミックな表現は国芳の本領が発揮されています。
一方で、美人画においては、江戸後期から幕末にかけて、濃艶な国貞風が主流であった中、国芳はさっぱりとした風情と気性を感じさせる美人を描いています。また、西洋の写実表現と浮世絵美人を組み合わせるなど、意外な組み合わせによって見る者の目を引きつける仕掛けなども見られます。これは武者絵や風景画で試みた表現が美人画にも生かされ、国芳の美人画の独自性となっているのです。本展では、国芳の人気ジャンルの一つである美人画に焦点を当て、その魅力をご紹介します。