Naan
わたしが人々の中に探し求める神さまは、パン。
パンを作るのに必要なもの。
まずは種、土、水、ひかり、気温、風、そして時間。
それに虫とミミズ、
さんさんと降り注ぐ陽光とたっぷりの雨。
人間、馬、挽き臼。
釜、年輪を重ねた樹から切り出した薪。
粉をこねる熟練した手。
やさしい表情の女性:母、おば、姉。
木櫛で生地に模様を刻むたくさんの子どもたち。
彼らと一緒にパン生地にゴマをふりかけて、
飾り付けを手伝う笑顔の媼。
そして灼熱の炎。
わたしの神は、いま現れようとしている。
はじめは、香り。パンの香り。
これこそ、まさにパン。
このパンは、神さまの顔。
いきもの共同体の神さま。
全てを包み込んでいるパン。
虫も、ミミズも。
創造に満ちたこのコミュニティから、
わたしの神は生まれる。
支配のないコミュニティ。
パンのように正直で、生きて、
作ることを心得ているコミュニティ。
パンの香りをかげば、心は浮き立つ。
すぐに手を伸ばし、顔を近づけ、鼻をくんくんさせて、
食べたくなる。
神から滋養をさずかるのは、なんと美しいのだろう。