あらゆる流行が生まれては消えていく現代においても、私たちを魅了し続ける着物。日本の誇るこの服飾文化が大きく花開いたのが江戸時代でした。泰平の世が続くなか、一部の特権階級だけでなく、経済的に裕福になった町人たちも「装いを楽しむこと」に情熱を傾けるようになったのです。厳しい身分制度にも関わらず、ときには武家より町の女性たちのほうが、高価な素材や技術を凝らした衣服を身につけることさえありました。江戸幕府はたびたび贅沢な装いを禁止する法令を出しましたが、人々は裾模様や裏模様などを工夫してファッションを楽しんでいたものです。
当時の風俗を写した浮世絵からも、あらゆる階層の人々が装うことに喜びを見出していたことが伝わってきます。浮世絵師たちは、季節やイベントによって異なる着こなしの様子や、簪や帯といった小物へ向けられる女性たちのこだわりを描き留めています。画中に見られる色や柄の合わせ方も実に多彩で、髪型やメイクも多種多様です。江戸の人々にとって、ファッションが生活を彩る重要な要素であったことがうかがわれます。
本展では浮世絵を通して、日本人の感性が育んだ服飾文化の魅力に迫ります。浮世絵に描かれる江戸っ子の多彩なファッションから、着こなしのテクニックを盗んでみるのも楽しいかもしれません。
※期間中展示替えがあります。
前期4/1~26 後期5/1~26