光源の見えない柔らかな光の中に流れ満ちる、時のない時間。心の在処とはその様な時間の中にこそあるのかもしれません。強制された忙しさの中で忘れかけてしまった心の在処を、一つ一つ思い出して懐かしみ、祈るように版木に向かい制作をしています。木と和紙と墨がこの作品を支え、私はその中に彫刻刀を以て「想い」を塗り込めるだけです。
私たちは個人独自の世界観というものを非常に大切にして「ものづくり」をしています。自分の世界観を他人と比べる必要はありません、「これが私だ」という個性を作品の中に打ち立てて行ける、それこそが芸術の自由なところであり懐の深さなのだと感じています。自分の中に持っているもので精一杯伸び伸び描いてください、もはや上手や下手ではありません。それがその人の「味」なんです。「らしさ」と言ってもいい、その点を大切に作品を作りそして鑑賞して頂けたらと思います。