早春の日差しを浴びてほころぶ一輪の蕾、枝いっぱいに花開く満開の桜、潔く散る桜吹雪ー数ある花の中でこれほど日本人の心にとけ込み愛されている花があるでしょうか。散りゆく花びらにも美しさを感じとる繊細な感受性は、四季のある自然環境の中で養われた日本独特の感性といえるでしょう。
世の中のすべては変わりゆくものという日本人の美意識は、文学や芸術の分野で様々に表現されています。古くからの伝統文化を受け継ぐ日本画には花鳥画というジャンルがあり、四季の移ろいを花に託してきました。中でも桜はそのはかなさが好まれ、数多く取り上げられています。
平松礼二画伯の作品にもまた桜が多く登場します。画伯は、中国やアメリカ、フランスなど国外の風物を取材する中で、日本の伝統美を再認識していったといいます。外国の風景を題材にしたジャポニスムシリーズでは、画中のモネの池に現実にはない桜の花びらを浮かべ、日本の象徴として描き出しました。また、近年では日本の様式美を追求した装飾性の高い作品を描いています。
今回の展覧会では、日本美の象徴である桜を中心に、春の花々をモチーフにした作品を華やかに展示します。