鎌倉在住で現在活躍中の美術家・樋口健彦(ひぐちたけひこ 1966-)は、大阪芸術大学工芸科陶芸コース卒業し、多摩美術大学陶芸専攻研究生を経た後、国内外でレジデンスプログラムに参加し制作活動を続けました。90年代から多方面での発表の機会を得て、精力的に活動の場を広げています。
一見すると金属のような樋口作品は、陶に墨を吸い込ませバーナーで焦がしながら仕上げていくという独自の技法で作られており、光を拒絶した漆黒の美しさに特徴があります。彼の作品は主に3つのシリーズが挙げられます。台形の陶板を何枚も重ね、幾何学的形態を示す「RealNumber」。これは1998年に発表されてから、その後の彼の代表作となりました。もうひとつは表面に無数の穴があけられた黒い球体である「大黒玉」。これは2006年頃から登場し、直径10センチから1メートルと大小様々です。さらにもうひとつは、断面をコの字やロの字を象った薄い陶板のシリーズです。これは「大黒玉」とほぼ同時期に登場しました。本展ではこれらの代表的なシリーズ及び新作を含む18点を展示いたします。
公立美術館で初の個展となる本展は、多くの来館者の方にご覧いただけるよう館内無料スペースを利用しています。新鮮み溢れる樋口健彦の作品世界をご堪能いただければ幸いです。