画家・斎藤真一は、盲目の女性旅芸人である瞽女や吉原の遊郭など、失われてゆく日本の文化をテーマに独自の作品世界を創り出しました。1964 年以後に描き始めた瞽女の作品は特に人気が高く、現在も年々ファンを増やし続けています。
瞽女と出会ったきっかけは、ヨーロッパ滞在中に親交を深めた画家・藤田嗣治から「日本に帰ったら秋田や東北の良さを教えられ、自分の画風で描きなさい」と帰国の際に勧められたことでした。
斎藤は帰国後、東北、北陸一帯を歩き始め、やがて瞽女の存在を知り、強く惹かれるようになります。瞽女に会って話を聞き、資料や文献を読み込むだけではなく、実際に彼女たちが旅した道を同じ荷物を背負って歩いた斎藤は、瞽女の持つ哀愁を見事に表現した作品を描き上げました。ある瞽女が失明する前に見た太陽の色を表現したという朱色に近い鮮烈な赤が作品には多く使われていますが、失明した後、時間を経て、彼女の中で色の純度が高まり、赤い色彩の印象がより強くなっていると考えた斎藤が、「赤というより、赫がふさわしい」と生み出した色です。これも瞽女という存在に入れ込み、研究を重ねていたからこそ生まれたものです。
本展は、瞽女を描いた油彩作品、素描など約20 点展示します。公立美術館の企画展にしか出品されていない秘蔵コレクションが中心となります。また、貴重な絶版資料もご紹介いたします。