水墨画は、墨と水との調合によって墨の色に変化をつけ、筆の使い方によって線や面や筆触などの表現に工夫をこらして紙や絹布に描く絵画形式で、中国で生まれ、朝鮮、日本にも伝わった東洋独特のものです。
日本では、鎌倉時代後半に南宋の禅僧が次々に渡来し、牧谿など南宋系の水墨画が多く将来されて、禅僧や絵仏師などにより描かれるようになりました。室町時代になると、武家社会の文化芸術の中で水墨画はさらに発展し、周文、雪舟など高名な画僧が現れて黄金期を迎えました。足利義政の御用絵師で、狩野派の祖となった狩野正信は、水墨画を禅味がかった晦渋さから、わかりやすい平明なものとし、いわば水墨画の日本化を図ったとみられています。江戸中期に南宋画が日本に移入されると、当時の画派にあきたりなかった画家たちに支持され、南画として全国的に描かれるようになりました。水墨画は各流派で描かれ、優品を残して画家も多くいます。明治以降にも橋本雅邦、横山大観、河合玉堂、松林桂月、児玉希望など、現代的に水墨画の技法を生かした画家たちがいます。