絵画といえば額に入った絵がその代名詞のようになっているといえるでしょう。しかしそれは明治時代以降、近代社会の確立にともない額絵が普及してからのことなのです。それ以前は、屏風や軸、絵巻に仕立てられた絵画がもっぱらでした。このような形式は、人々の生活様式と密接に関連したものでした。
風よけの道具であった屏風は、平安時代に宮廷や貴族の邸宅を飾る調度品として発展しました。
掛軸は上下に軸木をつけただけの簡易なものがその発端といわれています。室町時代、茶道の発展とともに広まり、多くは床の間に掛けられてきました。
巻子本ともいわれる絵巻は、横長の画面に情景や物語が右から左方向へと展開していきます。とりわけ平安時代や鎌倉時代には多くの傑作が描かれたことで知られています。
近代以降の画家たちは、これら古くからの形式を受け継ぎ、常に新しい時代にふさわしい表現を模索してきました。そうした「伝統と革新」が交錯する新たな「日本の美」は、現在も脈々と生み出され続けているのです。今回の展示では、主に明治時代以降の巨匠たちが描いた屏風や掛軸、絵巻を、「山水」、「花鳥」、「人物・風俗」の三つの主題別にコーナー分けして紹介します。
圧巻は岩橋英遠が故郷、空知郡江部乙村(現・滝川市)の風景を追想して描いた絵巻《道産子追憶之巻》です。パノラマ的に季節が巡りゆく長大な画面(約30メートル!) はまさに壮観そのものです。