小林一三(逸翁)が蒐集した古筆資料は数多く、中でも、大正8年に益田孝(鈍翁)のもとで切断された「佐竹本三十六歌仙絵巻 藤原高光」(重要文化財)は、世間に広く知られた作品です。
さらに、鈍翁が蒐集した古筆切の名品24葉を、昭和10年頃、田中親美に依頼して手鑑帖に仕立てさせ、自ら命名した「谷水帖」(重要文化財)も逸翁の古筆蒐集を代表する作品といえるでしょう。
「古筆切」とは、おおよそ鎌倉時代以前の能筆家の書写した、書籍や巻子本といった作品を、愛好家の増加にともない、その需要に応じるために1枚ごとに裁断し、軸装や帖に仕立てたことに由来します。
茶道の隆盛とともに、床に掛けて楽しみ、数多くの名筆を味わう古筆手鑑なども江戸期には生みだされています。
今回の展示では、伝紀貫之筆「部類銘家集切」、伝藤原行成筆「和泉式部集切」、伝西行筆「白河切」(後撰和歌集)、その他多数の古筆切、『古今和歌集』『和漢朗詠集』等の冊子本、巻子本、絵巻の断簡などを一堂に公開します。