本展は、出光コレクションの約2,000件におよぶ日本陶磁から厳選した、珠玉のやきもので構成する展覧会です。出光美術館の陶磁器蒐集は、造形の美しさと多様さを求める〈鑑賞陶磁〉の視点で貫かれています。国内屈指のコレクションといわれる古唐津の場合には、その視点は、初代館長・出光佐三の美意識と人となりをあらわすような、大らかさと豪放さとなって語りかけてきます。
また、日本陶磁の約4,500年を視野に収めた本展は、やきものの歴史と魅力を再発見していただける機会ともなるでしょう。縄文・弥生時代の土器にこめられた先史時代の人類の力と叡智、志野・織部など桃山陶にあふれる健やかさ、柿右衛門・鍋島にみる色絵磁器の鮮麗さ、京焼の野々村仁清・尾形乾山が表わした風雅の極致。そして古唐津と並び、もう一つの蒐集の柱である古九谷の、破天荒にして艶美な粧(よそお)いなど、日本陶磁の魅力は、時に両極といえるほどの幅広さ、寛容さをそなえています。
土と薬という、地球そのものから生まれて来たやきものの美は、見る者の心身を、豊かな生命力で潤してくれることでしょう。開館10周年の記念の年に贈る展覧会で、やきものとの対話を通して、豊かなひとときをお過ごしいただければ幸いです。