西洋の歴史を振り返ると、かつて特異な目で見られる人々がいたことに気づきます。外国人をはじめ普段目にしない人、見かけや言動の変わった人などです。少数派であったこれらの人々は、しばしば蔑まれ、好奇の対象となりながらも、時には西洋人たちのロマンを映し出す存在でもありました。彼ら社会の「よそ者たち(アウトサイダーズ)」は、それゆえ、大多数の人々の眼差しのあり方を教えてくれる存在でもあります。
この小企画展には、かつての西洋人たちが「よそ者たち」に注いだ眼差しを感じさせる、当館の所蔵版画が展示されます。作品は16世紀から19世紀までにまたがりますが、中心となるのは、17世紀の版画です。この時代の西洋は新大陸や東洋に進出して、それまで見たことのなかった多くの「よそ者たち」を発見しましたが、同時に、西洋に近代国家が生成し、社会のヒエラルキーが確立することによって、内部の「よそ者たち」が以前にも増して顕在化していったのです。特にフランスの版画家ジャック・カロは、鋭い観察眼によって彼らを生き生きと描き出しています。展示されるさまざまな「よそ者たち」は、時代の空気を私たちに伝えてくれることでしょう。