本展では、船と建築の深い関係に注目します。今日ではほとんど知られていませんが、近代建築の巨匠ル・コルビュジエ(1887-1965)をはじめとする建築家たちにとって、かつて船は機能性・合理性の象徴であり、建築がめざすべき規範として認識されていました。実際、建築には、船体の流線型、屋上デッキ、丸窓など、船が究極のモダニズムのシンボルへと昇華されていった様々な証左を見つけることができます。このたびは、写真や模型を中心に、様々な具体的事例を通して、船がいかに建築家、そして建築に影響を与えていたのかを明らかにします。加えて、現代建築に船が参照されている事例についても、ご紹介します。船が、時代を超えて建築家たちを魅了し続ける興味深い存在であることをお分かりいただけることでしょう。
また、オリエンテーションルームにて、ル・コルビュジエが手がけた唯一の船「救世軍収容所」(1929年改造)と、建築家遠藤秀平氏(1960―)による、この船のリノベーションのためのシェルタープロジェクトについても紹介します。