今まで多くのアーティストたちが、挿絵や装丁をはじめ、さらには本をテーマにして様々な作品を制作してきました。現在、本を取り巻く環境は、グーテンベルグが活版印刷を発明して以来、大きな変革の過程にあります。たとえば電子書籍やiPad の登場によって読書はもとより、従来の印刷製本や流通、配本をはじめ本に関係する産業そのものが、新たな次元へ移行してきています。そこでは読書という「思考」は、思考を欠いた検索と操作を主な目的と化とした知識の獲得に変化しているようです。このような時代にあってなお、アーティストたちは何故「本」や「本的なもの」に惹きつけられるのでしょうか。本が人間の記憶や思考を外在化したものであるとすれば、本は姿を変えた人間の譬えであるとも言えます。現代のアーティストたちの関心は、本をめぐるこのような大きな変化を通して、人もまたどのように変化してゆくのかということであり、それを作品に反映させているのです。本展では、うらわ美術館が収集した本をめぐるアート作品やブック・オブジェに加えて、中堅や若手作家のインスタレーションを紹介し、「本ということ」の見えない側面を紹介します。