鈴木春信(1725年頃~70年)の露草青、東洲斎写楽(生没年不詳)の藍、葛飾北斎(1760年~1849年)のベルリンブルーなど、世界を魅了した浮世絵の「青」。空や水などの表現に欠かせない「青」は、浮世絵の表現を一変させる契機となりました。
錦絵誕生直前の宝暦期(1751-63)に描かれていた2色から3色摺りの紅摺絵では、紅の他にくすんだ青色調の藍が使用されていました。
明和2年(1765)、鈴木春信の大きな貢献により多色摺版画である錦絵が誕生。春信は華奢で繊細な美人画を創り上げ、露草から抽出した美麗で爽やかな青絵具で衣装や空、河川を描写しました。しかし、露草の青は退色しやすいものでした。
寛政6年(1794)、非退色の藍が鮮明な青色に改良されて出現し始めます。同年デビューし翌年正月に姿を消した東洲斎写楽は、他の絵師に先駆け、一部の作品でこの藍を施します。しかし、水に不溶性なので製法やぼかしなどの技法に難点があり、使用はなかなか広まりませんでした。
文政12年(1829)、葛飾北斎が舶来の水溶性化学染料であるベルリンブルーを使用した《冨嶽三十六景》を刊行し始め、圧倒的な人気を博しました。ベルリンブルーは、極めて鮮やかな発色でぼかしを表現することも容易です。その魅力的な青色は当時の人々に広く評判となり、ベルリンブルーの採用は江戸後期における風景画の発展に大きな影響を与えました。
本展では、礫川浮世絵美術館のコレクションの中から春信や喜多川歌麿(1753年頃~1806年)、北斎などの絵師の作品を中心に、一部展示替えを含め前後期合わせておよそ90点の作品を紹介し、浮世絵に見る青絵具の表現の流れを辿ります。また、歌麿に関しては、露草の青と紅花の赤の混色である「紫」も併せて検証いたします。
※会期中、展示替えを行います。
2月15日―3月6日【前期】
3月8日-3月21日【後期