鈴木藏氏(すずきおさむ、1934年-)は、現代志野をつくる陶芸家のなかでも抜きんでた存在です。
釉薬研究に秀でた窯業家、鈴木通雄を父に1934年に岐阜県土岐市に生まれた鈴木氏は、現在まで50年以上にわたり、志野を中心に織部や瀬戸黒などの作陶を続け、1994年には、荒川豊蔵に続き、二人目の「志野」の重要無形文化財保持者の認定を受けています。
「志野は日本で生まれた独特の創作であり、
日本人の感性、美意識といった
最も基本的なすべてが凝縮されている」
鈴木氏のこの言葉は、志野の本質を突くものであり、簡潔な表現の背景には、半世紀にわたる伝統との対峙があり、積み重ねた思いを凝縮した深みがあります。氏は志野の本質を、現代にどのように継承し、未来に伝えるべきかを精魂傾けて追及してきました。 そうした作陶姿勢を最も象徴するのが、ガス窯専一による焼造です。志野は薪の窯で焚くのが最良とされた時代から鈴木氏はガス窯での焼成にこだわり抜き、今日に至るまで自身の創意による作陶を目指してきたのです。
展覧会には、鈴木氏の食器制作の原点でもある「流旅転生」展 (於:菊池ゲストハウス、1985年)出品作と、これまで造形の変遷をたどる大皿、花器、茶碗、水指などの代表作を展示いたします。本展を通じ、鈴木志野における伝統と現代の融合のだいご味をご堪能いただければと存じます。