日本のやきものの歴史は、縄文時代から現代に至るまで1万年以上にわたって続いています。その長い歴史の中で、ヨーロッパからもたらされた芸術観によって、作り手に個人作家としての意識が芽生えたのは、今から約100年前のことです。
それまでの日本のやきものは、職人が分業体制により生産していましたが、この時期になると、富本憲吉(1886-1963)のように、土の成形から焼成までの行程を自身で行い、自らの考えに基づいた白磁、色絵磁器などのうつわを制作する個人陶芸家が登場しました。
戦後になると、八木一夫(1918-1979)のように、壺や皿などの実用的なうつわから離れた、用途を持たない造形を制作する作家が登場しました。また一方で、鉄釉や青磁釉を駆使した清水卯一(1926-2004)、複数の色土を重ね合わせて文様をあらわす練上の技法を極めた松井康成(1927-2003)らは、古いやきものを研究し、それをもとに創作を行いました。
本展では、当館が所蔵する富本憲吉から八木一夫、そして現在活躍する作家も含めた、日本の近現代の陶芸家約60名の作品を約100点展示します。陶芸家が試行錯誤を重ね、自己の技術や想いをうつし出した作品を紹介することで、土という同じ素材を扱いながらも、各々に異なる作品の多彩な魅力を探ります。