奈義町現代美術館では、岡山県出身の版画家小野耕石(1979年~)の、地元・岡山での初個展となる展覧会を開催します。
小野は、大学在学中から、版画の特質である「エディション(複数性)」を中心に、さまざまな実験的表現を試み続け、独自の版画による表現様式を追求している作家です。「版画」の持つ可能性に揺さぶりと広がりを与えることを芸術的表現の目的として自らに課し励んできました。
小野がよく用いる版画手法は、ドット(点)を版下として描き、そのドットを同じ位置に100版程度刷り重ねていく表現様式で、他の美術作品の模倣に留まるものではなく、ある種「限界芸術」とも言える独自の視点から制作されており、今後の美術界において重要な役割を果たす可能性を秘めています。
今回の展示では、昨年春に東京・銀座の資生堂ギャラリーで発表され話題になった、平面作品をより進化させた新作と、平面から派生して生まれてきた立体作品とで構成されています。中でも、インクと鹿の頭蓋骨等を使い、自然美と人工美との境界を表現している立体作品は、版画技法の幅や、モノの考え方、捉え方一つで表現方法がいくらでも展開でき、あらゆる可能性を創造することができるということを実証しています。
観る人に芸術表現の一つの在り方を問うと同時に、小野の創り出す豊かな作品世界を体感していただくことを期待しております。