江戸時代、オランダ船がもたらしたヨーロッパ各地の陶磁器を、日本人は「阿蘭陀焼(おらんだやき)」と呼んで珍重していました。18世紀後期・産業革命下のイギリスで銅版転写技術を用いて文様を施す軟質磁器(プリントウェア)が生産されはじめ、19世紀にはオランダやベルギー、フランスへ生産地が広がりました。プリントウェアの文様はヨーロッパ各地の風俗・名所風景画や理想化された中近東・インド・中国の風景画など、当時のヨーロッパ社会の好みを色濃く映し出しています。
こうしたヨーロッパ製プリントウェアはオランダ商人経由で同時期の日本にもたらされ、人々の目を驚かせました。
日本人はこのプリントウェアもまた「阿蘭陀焼」とよび、さらには西洋の風景・人物をモチーフに取り入れた手描きの染付陶磁器(「阿蘭陀写」)まで作ってその異国情緒を楽しんだのです。
本展は伝世のイギリス製・オランダ製プリントウェアを中心に、文様のオリジナルとされる中国・清時代の青花磁器、さらに幕末期から明治時代にかけての「阿蘭陀写」や銅版転写陶磁器などを紹介し、東西陶磁器の器形・文様などの系譜と時代背景を追うものです。