2010年(平成22)は林芙美子の『放浪記』が刊行されて80年になります。1930年(昭和5)の刊行当時、大ベストセラーとなった『放浪記』は、舞台化や映画化もされるなど、時代を超えて読まれてきた作品です。昨年5月には、女優の森光子さんが2000回の舞台を踏んだ事でも話題となりました。行商の両親に連れられて北九州を転々とした後、広島・尾道で青春時代を過ごした芙美子は、1922年(大正11)、恋人を追って上京するも破局。ひとり残った東京で、事務員や女工、カフェーの女給などをしながらたくましく生きていきます。
展示では、関東大震災を機に大きく変貌をとげた東京の様相や風俗も紹介します。都市に一人で生活をする女性の先駆けとも言われた林芙美子の作品と人生をとおして、単身生活者が増加する東京の現在と未来についても考える機会にします。