作家・星新一(1926~97年)は、1957年、SF同人誌『宇宙塵』に発表した「セキストラ」が雑誌『宝石』に転載され作家としてデビュー。斬新かつ都会的な作風で日本SF文学の旗手として脚光を浴び、意欲的に作品を書き続け、「ショートショート」というエッセンスを凝縮した、時代や風俗を特定しない独自のスタイルを確立しました。
1983年にショートショート1001話を達成、さらにショートショートの普及に努め、執筆を続けながら、膨大な自作の改定に着手しました。
星新一は、過剰な情報があふれるネット社会、ヒトとロボットが共存する姿など、まるで現在を予言するかのような作品を描いています。短く平易な文章の中に鋭い批評や、深い味わいが秘められ、星作品には読者の想像力を刺激する不思議な魅力があります。
手塚治虫とは1963年に結成された「日本SF作家クラブ」への参加をきっかけに交流がありました。星新一をはじめ当時のSF作家クラブのメンバーと、大いに盛り上がって話をしていた様子が手塚のエッセイに記されています。また、手塚は星新一をモデルにしたキャラクターが主人公として登場した「W3(ワンダースリー)」を描くなど、親しみを持っていたことが伺えます。
本展は、直筆原稿や構想メモ、愛用品などゆかりの品で、星新一作品の魅力をひもとくとともに、それぞれショートショートとストーリーマンガを確立し定着させた星新一と手塚治虫の意外な共通点を紹介します。