伊丹市制70周年にあたる今秋、郷土伊丹の誇る俳人鬼貫(おにつら)の直筆および関連資料をできうる限り網羅し、ご紹介します。柿衞文庫創設者、岡田柿衞翁の俳諧資料収集の出発点ともなった鬼貫の世界をお楽しみください。
鬼貫(1661~1738)は伊丹の酒造家油屋の三男として生まれました。八歳の頃から俳諧に親しんだ鬼貫は、豪放で磊落な「伊丹風」と呼ばれる句風の中心的人物として活躍しますが、次第に遊戯性の強い放埒・異形な伊丹風に疑問を抱き、ついには「まことのほかに俳諧なし」の悟りを開きます。俳諧宗匠とならず弟子が少なかった鬼貫は、没後その功績を顕彰されることもなく、孤高の俳人となりました。この鬼貫に光を当て「東の芭蕉 西の鬼貫」と並び称して賞揚したのが、天明期の蕪村と太祇です。のち近代の碧梧桐や、柿衞文庫の創始者岡田利兵衞―柿衞翁が鬼貫顕彰に尽力しました。
鬼貫と親交のあった岡田酒人を先祖にもつ柿衞翁の俳諧資料収集の端緒となったのが鬼貫でした。伊丹町長在任中の昭和13年には鬼貫の二百年忌を実施しました。昭和45年には市制30周年記念の「目で見る伊丹の歴史展」が開催され、鬼貫の生涯を知る上で重要な家系図「上嶋譜」と武人としての一面を伝える鬼貫直筆の自叙伝「藤原宗邇伝」の発見をもたらしました。
伊丹市制70周年に当たる今秋、これに最もふさわしい展覧会として、現存する鬼貫の直筆および関連資料を出来うる限り網羅し、伊丹の誇る俳人鬼貫を顕彰すべく、「鬼貫のすべて」展を開催します。