古い家財道具を「民具」と呼んで、博物館や資料館は「生活文化財」として集めています。ガラクタ、粗大ゴミと揶揄され、何かと肩身の狭い想いをしている道具たちです。しかし、古い道具を集めて調べると、その道具に託された先人たちの智恵や工夫に新鮮な発見があるばかりでなく、昔からの暮らしのうつりかわりを知ることができるのです。
この展覧会では、岡崎市収蔵品より暮らしの変遷を語る生活道具のほか、マチ(町)やムラ(村)における生産・生業用具などを紹介していきます。道具から暮らしの変遷を読み取っていただきたいのと同時に、「今」を捉え直す場面になればと考えています。
ここに集めた道具たちは、いつかは捨てられる運命にあったものです。高価なものはありません。しかし、人の智恵と工夫、身近な素材、イエ(家)の歴史、郷土の暮らしを伝える身近な文化財として、後世に引き継いでいくべきものではないでしょうか。単になつかしさだけでなく、長い年月をかけて人々が築き上げ、伝承してきた生活の智恵と工夫を汲み取ってください。同時に、各段に便利になった生活を享受している私たちの「今」の暮らしや社会を捉え直す場面にしていただけると幸いです。