ドイツのアニメーション作家であり、音楽映画の名作として知られるウォルト・ディズニーのアニメーション作品《ファンタジア》(1940)の制作初期の段階に協力したオスカー・フィッシンガー(1900–67)は、「すべてのものに精霊が宿っている」と言い、その精霊を解き放つためには「そのものを響かせればよい」と言いました。この言葉は、アニメーションの語源が「アニマ(生命を吹き込むこと)」であることを想起させるとも言えますが、それ以上に,あらゆる物質がその中にエネルギーを宿しているということをほのめかす言葉だと言えるでしょう。
アメリカの作曲家ジョン・ケージは、このフィッシンガーの言葉にインスピレーションを得て以来、物質の中に宿る音を探求し、見えないものや聴こえないものの中から音を引き出そうと試みます。それはある「もの」を叩くことによってではなく、「もの」に内在するエネルギーを聴こうとすることへと深化していきました。
音や光といったものは振動現象の一種であることはよく知られていますが、わたしたちは、たとえば人間どうしの関係性の中からも,わたしたちの知覚を超え,物理的な振動としては知覚しえない、エネルギーの交感のようなものを感じとることもあります。この展覧会では、そのようなさまざまなエネルギーや現象としての振動をめぐる多様に解釈されうる「みえないちから」を表現する作品を紹介します。