東西交易品の中でもとりわけ貴重だった中国の磁器は、大航海時代以来、しだいにヨーロッパの王侯貴族を魅了し、17世紀にはオランダ東インド会社を通じて大量にヨーロッパへ渡りました。ザクセン選帝侯兼ポーランド王の「アウグスト強王」(1670-1733)は、それらの磁器を熱狂的に収集しました。王の命令下、それまで西洋では謎とされてきた磁器の製法が、錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベットガー(1682-1719)によって1708年にドレスデンで解明され、1710年、王立磁器製作所のはじまりをもって300年にわたるマイセンの歴史が幕を開けます。
ベットガーが開発した炻器(せっき)・白磁にはじまり、東洋への憧れを物語る「柿右衛門写し」や「シノワズリ(中国趣味)」の飲食器、王が夢見た磁器による壮大な宮廷動物園、優美なロココ様式や万国博覧会出品の大作から、知られざるモダニズム時代の傑作、さらに現代の作品まで、各時代の代表的名品が勢揃いし、その歴史の全貌に迫ります。つねに最先端の美術様式を取り入れつつ現在もなお続く、“生きた窯”の手仕事の粋をお楽しみください。